就活ビジネスと「言い返さない」人間の都合の良さ

「言ったら立場的にマズくなるから誰も言わないだけで就活って終わってるよ」という声は散見されるものの、実際のところはどうなのか、単にダメダメ人間が自分の馬鹿さ加減を棚に上げて騒いでるだけじゃないのか、と考え、実際に客観的な形で「現在の就活はどういう状態なのか」を調べてみた。

 

そして思った。終わってるわ。

 

どうやって「客観的な形」にするか

そもそもこんな活動を始めたきっかけだが

先日は当社の選考にお越し頂き(中略)厳正なる審査の結果(中略)お祈り申し上げます。

 多分これを見た何人かは心臓が止まったことかと思われるが、もうホントびっくりするほどこの文体のメールが多いというかほとんど全てがこれで、このテンプレートに沿ったメールがお祈りメールと直喩されていることはいまさら言うまでもないものの、よく考えてみるとこれは妙だ。

文章を「自分で考えているならば」100人中99人が『先日は~厳正なる~お祈り申し上げます』みたいなメールを送る事態には普通なる訳がなく、それどころか不快感を煽るメールの象徴というくらいの扱いをされているのにわざわざお祈り申し上げるわけがない。お祈りメールはリスキーなはずなのだ。
ならば「お祈りメールを送るのには、不快に思われるリスクを背負ってでもそうした理由があるはずだ」と無理矢理結論付けることで、「何故お祈りメールを送るのか」ということを聞く口実ができるはずなのである。できるったらできる。
また、不採用としたならば不採用とするだけの理由はあるはずである。それこそ「他に良さげな学生がいたから」でも。もし選考基準が公開できないとしても、公開できないなりの理由があるはずである。それすら公開できないというのならこれはもうやましいことがあるに決まっているのである。あるったらある。
「このくらいのことに文句を言う奴は社会でやっていけない」という顔どころか文章にまでシワが寄ってそうなノイズを無視し、2(3)つのポイントに絞る。

①何故お祈りメールを送るのか

②不採用理由は何なのか

③不採用の理由が教えられないなら、それは何故なのか

 

予想以上に「終わってた」と思った理由

②に関しては何社かは教えてくれたが、その審査が妥当かは怪しいところがあった。だが実際のところ、「理由があるだけマシ」と言わざるを得ない事態になってきたのである。

 

☆C社

どうも自分の送ったメールに書いていた「答えなければ”不透明な企業”として相応の行動に出ます」という文言にたいそうお怒りらしく「お前の行為を脅迫と認定した」「次こんなことやったら弁護士呼ぶからな」「自分の通ってる大学や後輩に迷惑がかかることを自覚しろ」「一刻も早く自分に合った企業に出会えるよう努力しろ」というヤクザの恐喝みたいなのが返ってきた(実際はですます口調)。それでも恐れず、というか同じことをしなければいいので「説教はいいので質問に答えてください」と聞き返したものの返信は未だ来ません。弁護士も。
ただ実際のところこれに関しては相当ビビったので以降は脅迫っぽい文言を削除しました。実際否定しきれないし。(そもそも書いた理由は強く出ないと無視されると思ったので)

 

それにしても「努力」というワードはやはり薄っぺらい。自分は努力も苦労も必要だと思っているのだけど、それ以前に「相応の見返りややり甲斐があれば人間は勝手に努力も苦労もするだろう」と考えている。少なくとも、ニコニコして言い返さず、報われるかもわからない就活を盲目的に繰り返すことを「努力」と言っちゃいかんだろう。いや、そんなことは言ってないとは思うけど、「この場合の努力って具体的に何することですか?」と聞いても絶対明確な答えなんか返ってこないに決まってる(偏見)

 

☆T社

上記の反省で文章を脅迫っぽくなくしたにも関わらずブチギレたらしく、俺ではなく何故か就活エージェント側に連絡を寄越したらしい。自覚あるんじゃねぇか。
ちなみに就活エージェント側の言い分は「そんな活動に何ら意味はない」「自分が不利になるだけだからやめよう」とのことでした。ヤクザばっかりかこの社会は。
ちなみに「無関係の就活エージェント巻き込んでないで、文句があるなら直接言って欲しい」とのメールも送ったがこれも未だ返信なし。

 

ただ、就活ビジネスというものはその性質上、学生には「内定」という餌で採用基準が不透明な企業に総当りさせ、企業には「優秀な学生」という餌で数多くの学生の相手をさせ、両者から無限に金を搾り取るビジネスだと思うのだ。自分の妄想に過ぎないが。
なので採用基準なんかが企業によって示されてしまうと、それに満たない学生はそもそもエントリーしないわけでエントリーの総数は減ってしまう。
また企業としても、「優秀な学生は確かにいるが数は少ないし、むしろ人をどうやって育てていくかが大事」とか言われたら適当に人取って募集終了。就活ビジネス、お役御免。
そういった事態を防ぐために両者を盲目にさせて物量作戦を互いにさせているのかもしれない。重ね重ね言うが、自分の妄想である。

だが、就活が楽になって一番困るのは就活ビジネスをしている人間たち、ということは間違いないだろう。

 

☆その他

もう上二社が強烈過ぎて正直他を覚えていないが、
・「不快なメールを送ってしまって申し訳ございません」という比較的良心的なもの(この時は理由は聞かなかった)から、
・面接で「お祈りメール」と直喩しておきながら自分もお祈りメールを送り、それについて言及すると「お答えできません」の嵐なもの、
・理由は教えてもらえたが「履歴書にはその人の誠意とか熱意だとかが反映されている」と言って憚らない。この見解自体納得できないし、入社してからの熱意は保証されない(人間のやる気は大体環境次第なので)
適性試験を途中で切ったにも関わらず合格にしてきた企業(この時はこの活動はしていなかった)
「内定者の殆どが女子になる会社です」で釣ってきた企業(自分は男)

…等あるが原則「答えになってない」のが多数。採用担当という仕事は中学生でもできるのかもしれない。

 

「不透明」はどこまで許されるのか?

ぶっちゃけここからが本題。そりゃあ確かに企業だから秘密にしたいものの一つや二つ普通にあるだろうが、秘密にするのはそれなりの理由がある(と察することができる)ものが普通であり、ソースコードやら技術やら製法やらではないもの、まして採用基準を企業秘密にする理由が見えてこない。秘密とは怪しまれるリスクを取ってこそだろう。
ただ日本企業は不透明なものが多すぎると言われて久しく、就活はその現象の一部にすぎないとも言えるだろう。じゃあ何故「不透明なものが多すぎる」のか。

 

「言い返さない」人間は都合がいい

まぁコレだろう。
自分がこの活動をしてなんとなく思ったのは「言い返されることを全く想定してなくない?」ということである。まぁテンプレお祈りメールだしあるとは最初から思ってないが。
これはまぁ多分きっと「ブラック企業の労働者は何故辞めない?何故反抗しない?」に対して「転職できる保証ないし、罵られるの怖いし、何より死への直行コース行きが怖い」と返されるのと同じだろう。自分だってこの行動で稼ぎの手段を完全に失うかもしれないのが怖い。今でも。
だがそのせいで現状維持されてしまう以上、必要なのは彼ら(自分含む)の勇気ではなく「堂々と反抗できる後ろ盾」と言えるかもしれない。まぁその後ろ盾そのものさえ誰かが勇気を出してくれないと作れないからこそ絶望的なのだが…。

場当たり発想だけだと必ず滅びる。それは誰もが自覚すべきことなのかもしれない。(大学の「内定先が要注意企業の可能性があるので一度相談ください」の看板を見ながら。じゃあたくさん内定出してもらって躊躇なく断れるようにしてよ…)

 

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C社は返信が来るまで晒し取り下げ。来なさそうだけど。